ディヌ・リパッティ

 ピアノを教えてくれている友人が、バッハの「主よ、人の望みよ喜びよ」を勧めてくれた。「まだこれからのことと思うけど、きもちが溢れてきた時に、こういう曲を一つ持っていると、助かるのよ」と、譜面とCDを貸してくれた。

うちで8枚組のCDを開けながら、あれ?確か・・・、と、古い記憶がよみがえり、昔、愛用していた録音テープの引き出しを開けた。やっぱり!!同じ演奏者、ディヌ・リパッティのダビングテープが出てきた。一本のテープに、勧められたばかりのバッハと、今さらっているモーツァルトが、一緒に入っている。なんとなんと。

ダビングして私にくれたのは、ピアノ友の夫君ではなかったか!果たして、彼の字が、私の付けたカバーの下から出てきた。レース編みのように細く端麗な文字が現れた。彼が亡くなって、四半世紀。あの頃、音楽家として多忙を極めていた彼ら二人に頼まれて、時々、子どもを預かった。彼が、娘のお迎えがてらに届けてくれた、ディヌ・リパッティだった。

あの頃は、自分がピアノを習いに行くことになるなんて、想像もしていなかった。でも、こうなると、彼に見透かされていたような気がしてくる。「いつか、役に立つかもしれないよ。僕のお気に入りの演奏を、お届けしておくからね」と、言いたかったかな。彼と彼女の、時空を越えた連携プレーに、助けられる。


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