お隣の座席

ふらりと空いた時間に、映画館へ行くことが、前よりも自然になりました。
「終着駅」「冬の小鳥」などは、そうして出会った、素敵な作品です。一つは、年老いた巨匠の、妻との葛藤の物語。一つは、父親に見捨てられた少女の、怒りを再生に転化する物語。私には、女性の人生を、正直に見据えた作品に、映りました。

私は、友だちと誘い合わせることなく、思い立って、一人で出かけるのが多いです。
劇場に入ると、何処に座ろうかなぁと思案しながら、選り好みをします。
「お隣の席は、空いているのが良いなぁ」と、思います。一方で、お友達通しで、始まる直前まであれこれとお喋りをしている会場のざわめきには、いつもホッとさせられます。あんまりストイックに、映画に向き合うような感じで、客席が静まりかえっていると、そそくさと、席を立ちたくなってしまいます。

ところで、憧れて会員になった、オーケストラの定期演奏会となると、様子が違います。
座席が決まっているので、いつも同じお隣さんです。たまに会うご近所さん、といった感じです。
私のお隣は、少し先輩のカップルです。ご夫婦というより、同好の志でしょうか。

このお二人が、始まる前にお喋りをしています。
女性「わたし、この音あわせが、大好きなの。ワクワクしてくるわ。」
男性「う~ん、そうかな。これ、僕は失礼なことじゃないかと思うんだ。」
女性「あら、なぜ?」
男性「音なんてね、人が入る前に合わせておくものだろう。出来ることなんだよ。」
女性「そうなの。でも、わたし、この音あわせが大好きなの。ワクワクしてくるわ。」
男性「う~ん、そうかな。これ、僕は・・・・」

エンドレスで、お決まりの会話。またあのお二人は、来ているかしら。そして、やっぱりあの話かしら。
少し楽しみになってきた、この頃です。
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