シンフォニアの旅

ゆっくりゆっくり、ピアノの練習を続けている。バッハのInventionsが済んで、三声のSinfoniasに進むことになった。「高音と、中音と、低音のそれぞれの旋律をさらうといいよ。譜面を色分けする人もいるよ。」と、練習方法について親切なアドバイスをもらったが、たいして気にも留めずに帰ってきた。

ピアノに向かうと、果たして、どうやって弾き始めるのか、途方に暮れ、やっと、友人の忠告が蘇った。

譜面をコピーして、裏打ちの厚紙を張り、旋律に三色の色をつけ始めた。途中で、四色にした方がいい、と気づいた。中音に使う右手と左手の切り換えどころに、色の違いで目印をつけよう。

ところが、いったい、どこが切り換えどころなのか、また、途方に暮れ、ピアノに戻って、指使いをさらった。ぽろん、ぽつん、ぽろん、ぽつん。

まるで、夢を彷徨っているような時間が過ぎる。急に目が覚めて、じゃらんじゃらんと鍵盤を拭き、ふたを閉めて、暮らしを振り向く。なんだか、「ただいま!」と言いたい気分。

旅・旅

「日の名残り」"The Remain of the Day"を、英語クラスで読むことになった。舞台になるイギリス西部の街をいくつか入力すると、主人公がドライブするロードマップが現れた。オクスフォードから、ソールズベリーを通ってドーセット州モーティマーズ・ボンド、サマセット州トーントン、デボン州タビストック、コーンウォール州リトル・コンプトン、ウェイマスと続く。

アンソニー・ホプキンス主演の同名の映画が、イメージを補い、検索場面の写真が、その街の今を届けてくれる。ゆっくり、イギリスを旅しよう。一年かけて、楽しもう。

ギリシャから帰って後、図書館で図版を開くと、訪れたかの地が次々と現れる。写真に息を呑み、解説を読むうちに懐かしさがこみ上げる。

毎日の中に、旅が重なり合っいく。

ギリシャ映画

ギリシャに旅することになって、ギリシャにちなんだ映画を立て続けに観た。圧巻なのは、テオ・アンゲロプロス監督の「旅芸人の記録」。ギリシャの20世紀初頭から第二次世界大戦後に及ぶ歴史を、垣間見ることになった。もう一作「エレニ」もほぼ同時代を描く。私の祖父母・父母の時代と重なる。「エレニ」では、主人公の夫は沖縄戦で命を落とす。

ギリシャと日本の戦後が立ち上がっていく中に、私の時代がある。連合軍による占領が、イギリス帝国主義によってなされたギリシャと、アメリカ主導による日本。その続きが現在。

「グラン・ブルー」はエーゲ海で育ったジャック・マイヨールの生涯を描いている。友人に、カナダで「オルカ・ラボ」を開いている人たちがいて、ジャックの話を聴いていた。彼の壮絶な物語に、今、触れた想いがする。

「日曜日はだめよ」は、「古典ギリシャ」に勝手な思い込みをする西洋人の勝手なおせっかいを、笑い飛ばしている。しかしながら、今回の旅企画も含め、通底にある「古代ギリシャ・ビザンティンへのあこがれ」は、相当な強引さでギリシャを今も規定している。

日本を訪れる海外の人々が、今の状況には関心なく滞在の日々を満喫していくことは多い。逆もまたしかり。けれども、今の中に滑り込み混ざり込み、空気の中に活きているものを無視することはできない。「そこ」へ行くのなら、「それ」を感じてこよう。今、やっと、齢を重ねて訪ねようとしている。

柳澤壽男監督特集atシネマヴェーラ渋谷

「劇映画から記録映画、PR映像から社会福祉映画へ、そして・・・」という副題で「戦後映画史を生きる 柳澤壽男監督特集」が、開催されている。2月3日から16日まで。福祉5部作「夜明け前の子供たち」「ぼくのなかの夜と朝」「そっちやない、こっちや」「甘えることは許されない」「風とゆききし」に加え、短編集が5組に組まれて全17本、プラス劇映画「どこかで春が」。トークショーも差し込まれる長丁場だ。

「ぼくのなかの夜と朝」の自主上映活動に、学生時代、深くかかわった。つれあいとの出会いもその一コマにあり、今に続く友人たちとの交遊も、その頃がベースになっている。「かんとくさん」は上京の折には我が家に逗留し、私ら家族は京都の「地蔵盆」に、毎夏、加えてもらった。45年のつきあいになる。

柳澤監督の活動拠点の中心人物、磯田充子さんが上京されるのに合わせて、上映会を訪ねた。続々と詰めかける観客、懐かしい関係者で、会場は満席。「ひと安心やわぁ」と、和らいだ磯田さん(みいねえさん)と、長編が上映されている合間に、カフェでおしゃべりしようとなった。

旧交を温めるひと時は、次第に、みいねんさんと私のかんとくさんを巡る激トークになった。柳澤監督の評伝を出版した編集者が、わきで聴いている。「こんなん、書かんといてよ」とみいねえがくぎを刺す。いや、これこそ書き残すべき、と私。だって、今日の再評価は、みいねえの尽力によるんだもの。今どき、女の全方位支援が「裏舞台」なんてありえない。フィルムの功績だけが彼がじゃない。編集者のスマホが、ずっと光りながら彼の手の中にあった。

女優時代からみいねえさんを撮ってきたカメラマンが、会場にいた。「遺影の更新やわ」と笑いながら、美しい立ち姿を見せる。かんとくさんも、彼女を撮りためて来たのだから、「磯田充子」のフィルムができたらいいのに。ねぇ、かんとくさん、あなたの女神に、お礼をする時が来ています!天から働いて、実現してください。

おらおらでひとりいぐも

友人から回ってきた本「おらおらでひとりいぐも」(若竹千佐子 河出書房新社)は、音とイメージの世界だった。「『この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ』」から始まった、「その果てに、桃子さんが辿り着いた、圧倒的自由と賑やかな孤独とはーー」と、本の背表紙にある。いいなぁ、「圧倒的自由と賑やかな孤独」。

上野千鶴子さんが、帯に「ほんとはね、ほんとは『独りがいい』。出会いも歓びだが、死別も解放だ。地声で語られた女のホンネが炸裂!」と書いている。うん、「死別は解放」。

息子さんを亡くして、今年で20年になる友人がいる。1月の空気に、一連の出来事が繰り返し思い出される。穴の淵に屈んだ彼女の姿を、ずっと見てきた。その彼女が振り返って語りかける、「あのね、楽しく生きよう」。その一言は、万巻のメッセージになる。

女たちは、生死を預託されて、そのきわで生きる。それで、知ったことが溢れている。だから、それでいい。
sidetitleあれこれおしゃべり入り口sidetitle
sidetitleプロフィールsidetitle

miyomiyo7

Author:miyomiyo7
みよみよのブログへようこそ!
私は東京の郊外、中央線沿線に長いこと住んでいます。
電車、飛行機、車、自転車・・・乗り物で移動するのが大好きで、その間に考え事をしたり「夢」を見るのが得意です。
お喋りは会ってするのがお楽しみ!
というわけで体を移動し、人に会い、やってみてから考えるアナログ派。
そんな「体験」から気づいたこと、手に入れたものを、ご紹介したいな。

sidetitle最新記事sidetitle
sidetitle最新コメントsidetitle
sidetitle最新トラックバックsidetitle
sidetitle月別アーカイブsidetitle
sidetitleカレンダーsidetitle
05 | 2018/06 | 07
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
sidetitleリンクsidetitle
sidetitleブロとも申請フォームsidetitle

この人とブロともになる

sidetitleQRコードsidetitle
QRコード
sidetitle検索フォームsidetitle
sidetitleRSSリンクの表示sidetitle